館長挨拶

    2011年3月11日の東日本大震災から11年7か月が過ぎました。

    新しい陸前高田市立博物館は、同じく東日本大震災により壊滅的な被害を受けた「海と貝のミュージアム」の機能を併せ持つ施設として再建し、令和4年11月に、晴れて開館を迎える運びとなりました。

    新しい市立博物館は、本来の役割である「社会教育施設」としての機能に加え、中心市街地に位置する立地条件を活かし、まちなかの賑わいを創出する「文化観光拠点施設」の機能を兼ね備えた博物館として整備してまいりました。

    陸前高田市立博物館をはじめ、4つの文化施設において被災した資料は約56万点であり、うち救出された資料は約46万点に上ります。

    これらの被災資料を再生させるための取組が、震災直後から日本博物館協会、東京国立博物館、国立科学博物館、岩手県立博物館をはじめとする全国の専門機関や大学の支援のもと行われてきました。

    津波で被災した資料の再生は、国際的にみても経験がなく、その方法は未確立であることから、作業に取り組む多くの機関では、直面する様々な困難を克服しながらの処理作業が今も続いています。

    また、これまで取り組んできた津波被災資料の再生については、その修復技術を館内で公開することによって、文化財保存の重要性を発信するとともに、近年、全国的に発生している土砂災害等の様々な自然災害によって被災した資料の再生活動の一助となるよう、今後、努めてまいります。

    最後に、被災資料の再生にあたり、これまでご支援、ご協力を賜りました全国の専門機関や大学の皆様、開館にあたりご尽力いただきました関係者の皆様、そして、被災した当館に思いを寄せ続けていただいたすべての皆様に厚く御礼申し上げます。

 

令和4年11月

陸前高田市立博物館

館長 松坂 泰盛